「歯科技工士、これからどうしていくのか会議」連載3回目となる今回は、歯科技工士の高齢化と減少が歯科医療にもたらす影響についてお届けします。
歯科技工士は高齢化しているのか?
公益財団法人日本歯科技工士会のまとめた「歯科技工士実態調査報告書」によりますと、回答者の平均年齢は、自営者で「53.6歳」、勤務者では「47.4歳」となっています。
さらにデータを紐解いていくと、20代の自営者は全体の「0.2%」、勤務者でも「5.6%」と非常に低い数値です。
一方で60歳以上の自営者は「25.9%」、勤務者も「20.1%」で、50代も含めると全体の半数以上が50代以上が占めています。
これは歯科医の自営者の平均年齢が「49.8歳」、勤務者が「35.7歳」という実情と比較しても、高齢化が進んでいると言えるでしょう(※1)。
「成り手」の減少が深刻化している
歯科技工業界では、以前より「成り手」の減少が危惧されてきました。
実際に2000年には全国で2,922人が歯科技工士養成学校へ入学していましたが、2017年には半数以下の927人に激減しています。
それに伴い、 以前の記事でもお伝えした とおり、養成学校の閉校が相次ぎ、2000年当時77校あった養成学校も、2017年には32%減の52校となりました。残った52校のうち、すでに4校では新規生徒の募集中止し、閉校になることが決定しています。
歯科技工士は低賃金、長時間労働という過酷な状況で働いている者も多く、卒業後5年以内の離職率は約7割にものぼり、成り手の減少に追い打ちをかけているのです。
そのためどんどん高齢化が進んでいるというのが現状です。
若者はより労働環境のよい海外へ
20代、30代の歯科技工士を中心に、海外へと渡る歯科技工士が年々増えてきています。
20年以上前から歯科技工養成学校の求人には中国、オーストラリア、アメリカといった海外の求人が出るようになり、転職者の数を含めるとかなりの人数が海外で働いていると思われます。
海外で働く場合、給料は日本とさほど変わりませんが、長時間労働や現地の物価などを考えると、日本よりも労働環境がよいと考える技工士も多いようです。
これから起きるであろう問題を考える
歯科医師と歯科技工士の理想比率は1:2ともいわれていますが、2017年現在、毎年約2,000人の歯科医師が誕生するのに対し、歯科技工士は900人強です。
そのうち、5年以内の離職率は約7割にものぼることから、今後さらに歯科技工士の減少は避けられない状況であるといえます。
さらに現在歯科技工の現場を支える50代・60代の技工士たちが今後約10年で離職すると考えると、現在就業している約35,000人の半数がいなくなってしまうことになるのです。
具体的にいいますと、団塊の世代が75歳以上となる2025年には、技工物の安定供給が難しくなると懸念されています。
歯科技工士養成学校の相次ぐ閉校を考えると、今後歯科技工士が増える望みは少ないと考えられます。ですが日本国内には約120,000人の歯科技工士免許を持つ者がいます。現在は離職してしまった技工士達に再び技工士として働いてもらう、などの対策が講じられた場合、まだ少しの望みはあるかもしれません。
今後も定期的に「歯科技工士、これからどうしていくのか問題」の連載で、技工士問題について取り上げたいと思います。
1Dニュースより転載
参考文献
- 1.『年齢階級・性別にみた歯科医師数』厚生労働省, https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/ishi/06/kekka2-2-2.html