根管治療について以下のような記事がでています。
https://www.news-postseven.com/archives/20190124_851788.html
”この中には,感染を起こして歯槽骨が溶けた(患者さん向けにわかりやすい表現になっています)患者に
根管治療を行った結果,1年以上かけて歯槽骨は再生されたという。”
と,の記述があります。
また,「根管治療で注意すべきポイントの1つとして”治療時間”が重要であるとし,某元大学教授によると,
”マイクロスコープによる根管治療は,約1時間が必要だ” と書かれています。
さらに,「もし,10分程度で根管治療が終わるようだったら,その歯科医の誠意とスキルを疑うべきかもしれない”
と締めくくられています。
当院に通院している患者さんは,ご理解を得ている方がほとんどであると思いますが,
根管治療に限らず,ほとんどの治療の予約時間は90分です。
もちろん,2001年からマイクロスコープを診療で使用していますので,その事自体は,
通院されている患者さんが一番良く知っている事と思います。
群馬県内では,もちろん,私が一番最初に取り入れました。これは,事実です。正確にはわかりませんが,
北関東でも,最も早かったのではないかと思います。
プロエルゴという最先端の機種を購入・設置した時も,その機種を最も早く購入しました。
一開業医としては,当時は相当な投資をしたわけです。
しかし,私は今でも顕微鏡に心から感謝しています。それは,多くの歯を救える結果を出せているからです。
また,顕微鏡のおかげで,多くの仲間とも知り合うことができました。
現在,私の歯科治療では顕微鏡だけでなくルーペなどの視力を補助する道具がなければ,診療ができなくなっています。
さて,90分といっても,例えば,9:00~10:30の根管治療の予約の場合,
術前のレントゲンを撮影(3分)し,表面麻酔(1分~3分)を施し,そのあと,麻酔をし,奏功を待ちます(最低5分)。
すでに11分経過します。
ラバーダムを施し,仮の蓋を除去してからが,ようやく治療が始められますので,
早くて治療開始は9:15といったところでしょうか?
次の予約の患者さんのことを考えると
10:15~10:20の間には治療を終わらせる必要があります。
残りの15分~10分の間で,撮影した動画の説明,使用したユニットの掃除,次の患者さんの準備をする必要があるからです。
したがって,90分の予約といっても,実質は60分が治療時間ということになります。
動画がきちんと見られるシステムを,もう1台の顕微鏡に装備すれば,少なくとも次の患者さんの準備は
そこにすれば良いのですが,もう3つのシステムは古くなっていますので,今の時代のがぞの解像度を考えると説明になりません。新たな画像システムを組むには,また相当の費用がかかります。(検討中です)
予約の時間も問題です。10:30に終わるとは,治療も会計も次回の予約もすべて終えて,
10:30には医院を出るということでしょうか?それだと,10:10くらいには,治療を終えないと当院では無理だと思います。
我々も人間ですから,1つの治療を終えたあとには少々の休憩が必要な場合もありますし,患者さんも治療以外の世間話を
する方もいますよね?
また,今の予約表は30分刻みになっていますから,その時間割りも考えなおさなくてはいけないかもしれませんね。
そうすると,実質,午前は2人の患者さんしか診られなくなります。
記事に書かれているように,60分の治療時間をかなり以前から確保してますので,誠意とスキルがあるのでしょうか?(笑)
一方で,私は保険診療もしています。保険診療の場合,それほどの時間はとっていません。10分ということはありませんが,
記事から言えば,誠意とスキルのない歯科医師になっているかも知れません。
私の父も歯科医師でしたが,根管治療に60分の時間はとってなかったと思います。保険治療が中心でしたし,
今の時代のように顕微鏡もCTもはなかった時代です。
父は誠意のない歯科医師だったのでしょうか?
父が私によく言っていた言葉があります。
「根管治療は歯科医師のキモだ。自分がやったことが全てわかる。その人の人格もわかる」
父は根管治療の難しさ,重要性をよく認識していました。その時はその時で,精一杯,治療をしていたと思います。
私は,1997年に開業し,2001年までは顕微鏡を使用していませんから,誠意のない歯科医師だったのでしょうか?
確かにスキルは,今とは違っていたかもしれません。
ですから,顕微鏡を使っているからとか,時間をとっているからとか,そのようなことだけで,
その歯科医師が誠意があるとかないとか,そのような議論をしてはいけないと思うのです。
顕微鏡完備と書いてあっても,実際に使っていないという話もよく聞きますし,保険点数が加算されたから導入した。
との話もききます。保険でできることは根管内の清掃と歯根端切除という外科的な手術だけです。一部の大学病院関連施設では,根尖を封鎖する特殊な薬剤も使用できると聞きました。その手術にも特殊な薬剤は一部の大学病院関連施設しか使えません。
ですから,このような書き方は非常に誤解を招くと感じています。
根管治療だけが顕微鏡治療の対象ではないですし,歯科衛生士の業務でも顕微鏡が必要になることがありますが,
使ってなければ,不誠実でスキルナシでしょうか?
と,このように治療時間をとっていて,また,治療に1年以上かかって,すべてがうまくいくということもありません。
1割くらいの方は,思うようにいかない場合もでてきます。
それと,時間がかかりすぎだ!と怒られる場合もあります。
動画による説明はほぼ毎回していますが,
残念ながら,内容を理解できない患者さんもいます。(仕方ないですよね?歯科衛生士であっても理解できない人達が多いですから・・。そんなに歯科治療は理屈も治療も簡単ではないです)
毎回,毎回,根管治療の説明をしていても,”結局,虫歯は治ったの??” って・・(ガクッ・・)。
それも現実です。
レントゲンに関しても,同じ事で,レントゲンなくして歯科治療はできないのです。
歯は骨の中に埋まっています。その状態を診るのはレントゲンがとても重要であり,
それを否定する歯科医師はいないでしょう。
しかし,患者さんにしてみれば「同じようなレントゲンを毎回撮影する」という表現になります。
私の場合,1ケ月に1度の予約ですから,レントゲンを撮影して1ケ月前の状態と今日の治療前の状態を比較しています。
また,治療後も今日,やったことがどうなのか?薬は届いているか?などの確認のために撮影します。
レントゲンなくして医学なしです。
説明・同意・理解を目指してきましたし,そのための動画での説明でしたが,最近は理解していただくということには,
少々,諦めを感じています。でも,それは僕らが急に脳外科の先生に脳の中の説明をされてもすぐに理解できないのと同じですので,仕方ないことかなと思っています。
当院で,1年間で抜髄(歯の神経を除去する)がほとんどないことも,大きな虫歯でも抜髄をせずに保存してきたこと,
外科的な処置をしなくても根管治療によって守ってきた歯も多くあること。こだわってやっている築造体の脱離(差し歯の土台の脱落)がなかったことなど,通院されている患者さんが一番よく知っており,そのような患者さんから,
また患者さんを紹介していただき,細々と診療ができれば良し。
治る確率が低い見えない目の治療や、聞こえない耳の治療が画期的に治癒した場合は、ニュースやドラマにもなるけど、抜くと診断された歯を残しても,何の話題にもならない。同じ臓器なのにね。(話題にしてもらいたいわけでもありませんが・・)
やるべきこと,できることを一生懸命やる。それだけです。